放射線についての説明は、ふだん放射線と付き合う仕事をしている人たちにとっても、実はとても難しい説明なのです。
というのは、放射線には、比較的よく名前の知られているエックス線や、アルファ線、ベータ線、ガンマ線などのほかにさまざまなものがあり、その種類は、とてもすべてを列挙できないほど膨大な数に上るからです。
そして、さまざまなものを含む放射線のすべてを、ひとくくりに分かりやすく説明するのは、誰にとっても簡単ではないからです。
物質の成り立ちを細かく見てゆくと、様々な粒子になります。
そうした粒子(電子や陽子や中性子や光子などの素粒子や、様々な原子核やイオンなど)が、光のような速さでエネルギーを運んでゆく姿を想像してください。
放射線とは、さまざまな種類の粒子がエネルギーを運んでいる状態です。
宇宙は、さまざまな粒子からできた物質と、粒子が運ぶエネルギーの流れである放射線とによって構成されています。
物質が変化するにはエネルギーが必要ですから、少し文学的な言い方をすれば、宇宙に活力を与えているのは放射線だということになります。
もし、宇宙に放射線というものがなければ、宇宙は星一つ輝かない、冷たく死んだ世界となるでしょう。
放射線は、書くこともできない自然の一部なのです。
放射線には、物質を電離する能力を持つものとそうでないものとがあり、最初に挙げたエックス線や、アルファ線、ベータ線、ガンマ線などは、すべて物質を電離する能力を持っていて、目に見える光や赤外線や、電波などは物質を電離する能力を持っていません。
そして、単に「放射線」といえば前者を意味します。